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石川ヘルスケアグループ 社会福祉法人愛美会・医療法人健康会様

[2026.07.14]

社会福祉法人愛美会・医療法人健康会様の代表施設「萬翠荘」・「アイリス」


「現場での実践力が高いからといって、そのまま優秀な管理職になれるとは限らない」。多くの医療・介護現場が直面するこの課題に対し、明確な「管理職ラダー」を用いて段階的なマネジメント育成システムを構築しているのが社会福祉法人愛美会・医療法人健康会様です。単にeラーニングで動画を視聴するだけでなく、役職ごとの視点の違いを学ぶ独自のグループワークを実施し、着実に次世代リーダーを育てています。今回は、その綿密な教育カリキュラムの裏側と、Waculbaの活用法について総副院長の田渕様、人材育成部の星川様・山地様、そして実際にWaculbaゼミを受講されている大西様・宮本様に詳しくお話を伺いました。(以下、敬称略)

1. Waculba導入の背景と決め手

コロナ禍と事業所の分散を乗り越える教育体制づくり

――― 本日はお時間をいただきありがとうございます。さっそくですが、Waculbaを導入しようと思った経緯をお伺いできますでしょうか。対面研修など他の選択肢もあった中で、なぜWaculbaに決められたのかも教えてください。

田渕 経緯からお伝えしますと、当法人は29もの事業所が点在しています。そのため、これまでのように対面で集まって教育を行うことが、コロナ禍でなかなか難しくなったという物理的な事情が一つありました。
もう一つは、2017〜18年頃に法人内で「危機管理室(安全・感染)」と「教育」の部門を立ち上げ、倫理や各論について地道に活動を続けてきたという背景です。しかし世代交代が進むなかで、施設だけでなく病院も含めて、これからの管理者の育成が大きな課題になってきました。

経営視点から倫理まで、多角的に学べるトータルパッケージ

――― 人的マネジメントスキルの必要性を感じていても、なかなか意思決定に踏み切れない法人が多いなかで、まず「院内で教育をしっかりやっていこう」という理念が先にあったのですね。

田渕 ええ。これからの時代を生き抜く管理者は、実践レベルの延長だけでは務まりません。実践も重視しながら、経営をしっかり考えられる人を育てなければ、目まぐるしく変化する状況に対応できない――そんな危機感がありました。

そうした課題が重なったときに、理事長の石川から『Waculbaゼミというのがあるがどうか』と紹介を受けました。シラバスをすべて拝見し、いまの管理者に何が活用できるのか、次の世代に何が活用できるのかを一つひとつ読み込みました。

これからの管理者には経営的な視点に加え、安全・感染、倫理、法的な側面など、多角的な視点が必要です。シラバスを一通り確認した結果、それらをトータルに学べる内容になっており、管理者育成に活用できるのではないかと考え、導入を決めました。

2. クリニカルラダーと連動した独自のカリキュラム設計

役職ごとの明確なゴール設定とコンテンツの精選

――― Waculbaの教材を使って独自のカリキュラムを作られたと伺いました。『こういう人材を育てよう』という明確なゴールがあってのことだったのでしょうか。

田渕 導入に至る前から、『クリニカルラダー』を基盤に置いていました。実践から段階的に管理者へと上がっていく、段階的な育成が必要だという考え方です。これを担当の星川・山地と相談し、私の思いを具体的な形にしてくれたのがこの二人です。

山地 介護職・看護職ともに、一般職以外の『管理職ラダー』を提示していました。リーダー、副主任、主任、管理者というラインを設けたうえで、『リーダーであればここを身につけてほしい』『次の副主任はこの部分』というように段階を踏み、求められる能力に合わせてWaculbaのカリキュラムから選んでいきました。

実践の延長ではない、段階的なマネジメント育成

――― 一つひとつのスキルが最初から言語化されていて、しっかりとしたラダーに合わせる形でWaculbaの教材を当てはめていったのですね。

山地 はい。提示されているコンテンツの中から、その役職レベルで身につけてほしいものを順番に組み上げて整理したのが今年の流れです。昨年は単月の課題が多くなりがちだったため、今年は年間計画と到達目標を定め、ラダーの目標に合わせて内容をさらに精選しました。根本に管理職ラダーがあり、そこに向かって動いています。

――― 法人としての目標を掲げることはとても大切だと我々も感じています。その重要性を理解していても本腰を入れられない法人が多いなかで、かなり以前からこうした仕組みに取り組まれていることに、あらためて感銘を受けました。

3. 学びがもたらした、現場の管理職の変化

感情に揺さぶられず、仕事として向き合えるように

――― 実際に学ばれたことが、日々のマネジメントで活きた場面はありましたか。

大西 以前は、部下との関わりのなかで感情に揺さぶられてしまうことがありました。学びを重ねるうちに、感情に振り回されず、一歩引いて仕事として冷静に向き合えるようになってきたと感じています。

――― それは管理職にとって非常に大きな変化ですね。これまで手探りでやってこられたことの『答え合わせ』ができた、という側面もあるのでしょうか。

大西 そうですね。信頼を得ることの重要性についてであれば、それを一つひとつかみ砕いてあるコンテンツを学習して、なぜ信頼を得る必要があるのかという基本をわかっていくと、そのために必要な行動についても考えられるようになります。また、こういった基本の学びは、10年も経つと、他者から与えられにくくなってきますので、あらためて一から学べるということは、マネジメントをする立場の者として、非常に価値のあることだと思います。

4. 全国の仲間との交流――Waculbaゼミの価値

全国の他施設と学び合えるメリット、そして現場ごとの課題

――― 動画コンテンツだけでなく、ディスカッションを行う『Waculbaゼミ』も必要だと思われたのはなぜでしょうか。参加されてみてのメリットや課題感をお聞かせください。

星川 ゼミは、全国のさまざまな方と一緒にディスカッションできる点が非常に良いと思いました。受講した職員からも『全国のいろいろな人と話ができてよかった』という感想をもらっています。

大西 まず基本的な知識を習得する座学の時間があり、その後に班に分かれてグループワークを行う構成自体が、実践力につながりやすくとても良いと感じました。一方で、私どもは介護施設ですが、参加者は医療関係の方が多い印象です。介護と医療では環境が違う部分もあるので、もう少し介護事業所の参加者が増えると、介護ならではの共通課題がワークの中でより活かされるのではないかと感じました。

宮本 私が参加したゼミでは、管理職の方が部下役、私が上司役を務める面談ワークがあり、自分とは違う考え方が聞けてとても面白かったです。一方で、同じ悩みを共有するという意味では、同じ役職・レベルの方たちとも話してみたいと感じました。

――― 貴重なご意見をありがとうございます。介護事業所の参加者も増えてきていますので、たとえばグループワークを病院チームと介護事業所チームに分けるなど、今後の運営にぜひ活かしてまいります。

少し距離のある相手だからこそ、本音で話せる

――― 全国の方との交流ならではの良さは、他にも感じられましたか。

大西 近すぎる相手だと、かえって本音を言いにくいところがあります。少し離れた地域の方だからこそ、利害を気にせず率直に悩みを打ち明けられる――そうした関係のなかでこそ得られる気づきがあると感じています。

5. 学びを定着させる組織風土づくり

「学ぶのが当たり前」の環境をつくる、経営層のコミットメント

――― 90分というゼミの時間を業務から割くことについて、現場ではどのように受け止められていますか。参加者が遠慮せずに参加できる環境づくりについてもお聞きしたいです。『スマホでWaculbaの教材を見ているとサボっていると思われる』という声が上がる法人すらあるなかで、どのような工夫をされているのでしょうか。

宮本  現場の立場から参加しましたが、気を遣うようなことはまったくありませんでした。最初から『出るもの』という認識で、管理職も参加していますし、その日は出られるように勤務が組まれていたので、とても参加しやすかったです。

――― 法人として時間枠を確保し、『出るものだ』という価値観が共有されているのですね。自由参加だとかえって出にくいこともあるので、シフトに組み込まれているのはさすがです。ある学会でも、eラーニング活用で最も大切なのは『意思決定者が学習に価値を認めて支援し、全スタッフに公言していること』、そして『明確な教育担当者がいること』だと言われていました。まさに皆様の状況と合致しています。

6. 法人独自の組織内ゼミという挑戦

役職ごとの視点の違いを学ぶ、独自ゼミの工夫

――― 他の法人様からは『自分たちでゼミを企画・実施するのはハードルが高い』という声もよく聞きます。法人内Waculbaゼミの実施は、どのようにして可能になったのでしょうか。

山地 リモートで全国の方と意見交換することにまだ慣れていない職員も多いため、短い時間でも部内で顔を合わせ、直接意見を交換するほうが得るものが大きいと考えました。

工夫としては、リーダー・副主任/主任/管理職の3段階ほどに分け、それぞれ『同じテーマ』で話し合ってもらっています。同じテーマでも、立場や課題によって出てくる意見や悩みは違います。

リーダーならチームの一員として、主任ならチームを導く立場として、管理者なら組織全体を意識する立場として――。その違いを各段階にフィードバックすることで、全員の学びになります。下の立場にある人が上を目指すとき、どう考え方を変えていけばよいかという気づきが生まれることを見込んで、組織内でのゼミを計画しました。

――― 『管理職になったら何をするのか、上がってみないと分からない』という不満は、世の中に根強くあります。なかには出世の打診を受けて辞めてしまう方もいるほどです。だからこそ、各階層がどんな考えで何を目指しているのかを、ほかの階層が知る機会は非常に価値があると感じました。それを法人内で実現されているのは本当に素晴らしいことです。

 

(法人内Waculbaゼミ当日の様子)現場の課題を持ち寄り、対話を通して学び合う時間

「接遇から職場の風土を作る3ステップ」というテーマに込めた思い

――― 最後に、今回実施された法人内ゼミで『接遇から職場の風土を作る3ステップ』というテーマを選ばれた思いを教えていただけますか。

山地 接遇の基本である『人が人を尊重する』ことは、倫理的な側面も含め、職場で最も大切なことだと考え、ここから入ることにしました。接遇という言葉だけでなく、相手を尊重し、自分も尊重される――人間関係の一番の土台にあるもの、という考え方で選びました。

――― 一番の基本でありながら、最も大切なところですね。長時間にわたり貴重なお話をありがとうございました。大変学びになりました。

全員 ありがとうございました。

おわりに

階層別のマネジメント育成やシステム化を徹底する一方で、最も大切にしているのは『人が人を尊重する』という接遇の基本であると語ってくださった愛美会様・健康会様。システムやカリキュラムという合理的な『仕組み』と、相手を思いやる『心』の両輪が揃ってこそ、真に強い組織が育つのだと深く実感させられるインタビューでした。同法人の温かくも確固たる教育の歩みは、これからも多くのスタッフと利用者の笑顔を支えていくことでしょう。

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