目次
1.『成人発達理論』における成人の4つの発達段階
ロバート・キーガンは『成人発達理論』の中で、成人は4つの発達段階に分類することができると提唱しています。
4つの発達段階は、「利己的段階」、「他者依存段階」、「自己主導段階」、「自己変容段階」とされています。
成人は常に自分自身を発展させることができ、利己的段階が初等の発達段階、そこから他者依存段階、自己主導段階と進んでいき、最後の自己変容段階がもっとも高いレベルの発達段階としています。
また『成人発達理論』では、4つの発達段階による、成人の物事の捉え方や考え方、あるいは他者との関わり方の変化を説明しています。
発達段階が進むほど自己と他者の見え方が変わり、他者を目的へ導く力が身に着くとされています。
なお、それぞれの段階の成人割合は、利己的段階が約10%、他者依存段階が約70%、自己主導段階が約20%、自己変容段階は1%未満と言われています。
2.発達段階は管理職のリーダーシップにも密接に関わる
先ほど、発達段階によって物事の捉え方、考え方、他者との関わり方が変化すると述べました。
発達段階が進んでいくほど、自己中心的な視点は薄れ、他者を理解する力、世界を理解する力が育まれていきます。
そして、周囲に対して、より器の大きく、温かく、力強い発信の仕方になります。
それは、周囲にポジティブな変化を起こすものです。
管理職は、目標やゴールに向かって組織をマネジメントし、導いていく役割ですので、こうした物事の思考方法や他者への働きかけ方は、リーダーシップの発揮にも密接に関わると言えるでしょう。
3.「自己主導段階」で発揮されるリーダーシップ
4つの段階の成人割合からも分かるように、多くの人は他者依存段階から自己主導段階の間にいると考えられます。
そして、自己主導段階と呼ばれている人は、いわゆるプロフェッショナルレベルとも言えます。
自己主導段階にいる人は、周りの意見に左右されず、自ら考え、自ら行動します。
また、自分なりの価値基準・価値体系を創り、その価値基準に基づいて自分を奮い立たせ、実践をしていく、他者を力強く導いていくことができるリーダーとなります。
そうしたリーダーは、自分の中で、ゴールを持って突き進むことができるので、成果を生み出すリーダーと言えるでしょう。
多くの割合の人が他者依存段階にいると考えられるので、管理職としては、まず自己主導段階をめざしてみてください。
今回は、『成人発達理論』における4つの発達段階によって変わる、物の見え方、話の聞き方についてご紹介しますので、管理職としてリーダーシップを発揮するうえで重要なポイントについて、理解を深めていきましょう。
4.4つの発達段階における話の聞き方
4-1. 「利己的段階」の話の聞き方
利己的段階にいる人は、自分に関係のあることはしっかりと聞きますが、そうでない話は聞き流す傾向にあります。
自分自身の関心には興味が向きますが、自分以外の視点が非常に弱く、他者の話に興味を持つ、他者の考えに寄り添うという視点が欠けてしまいがちです。
そのため、相手が話したいことよりも、「自分が聞きたいこと」を優先してしまったり、面談や会議でも、チームや部下にとって必要なことではなく、「自分が話したいこと」を優先してしまったりする可能性があります。
4-2. 「他者依存段階」の話の聞き方
他者依存段階の人は、他者に依存する形で自己を置いている状態と言えます。
そのため、相手の話はしっかりと聞きますが、相手に認められよう、気に入られようとするあまり、必要以上に同調したり、目上の意見を絶対視したりする傾向があります。
話し合いの場で、相手の意見を丸ごと受け入れることや、部下の調整役で済ませてしまいがちです。
また、目上の意見には従順でありたいため、柔軟な上司に対して、しっかりしてほしいと感じることが多いのも特徴です。
その理由は、相手に認めてもらいたいという思いが強いからでもありますし、自分自身の考えや価値体系基準をしっかりと持てていないため、極端に言うと、他者の言いなりになろうとしてしまっているから、と考えられます。
思い当たる人は、こうした行動に対して、「自分自身で決められないからそうしているのではないか」と、自問自答してみてください。
4-3. 「自己主導段階」の話の聞き方
自己主導段階の人は、基本的には、自分なりの成功モデルや価値体系を明確に持っています。
そして、相手には自分と異なる価値観があることを知っていますが、自分の価値観に対して強い自負があります。
そのため、相手の話の聞く際、基本的には、相手の意見の背景にある考えや価値観を聞き取ろうとしますが、それは自分の価値観を実現するために、どのように他者と連携するかを考えている状態と言えるでしょう。
言い換えると、自分の価値体系基準の範囲内で、相手の話を聞き取ろうとするため、自分の価値体系基準の枠内に入っていれば受け入れることができますが、自分の価値体系基準の枠内に留まらない意見に対しては、「間違っている」という判断をしてしまいがちです。
つまり、自己主導段階の人は、柔軟な考えを持っているようで、実は自分の価値体系基準の枠内でしか、相手の話を聞けていないのです。
これが自己主導段階の人の限界とも言えるでしょう。
ただ、この自己主導段階に到達することは、本当に難しいことでありますし、こうした人々は、自分の論理を持っていて、それで成果を出せているのです。
そのため、現在は尊ぶべき基準となっています。
4-4. 「自己変容段階」の話の聞き方
自己変容段階の人は、自分なりの価値体系基準を、その場・その状況に合わせて、柔軟に変えていける人と言えます。
その瞬間ごとに、最適な価値体系基準を再定義することができるので、1つの軸・1つの成功モデルに囚われず、臨機応変に判断をすることができます。
そのため、相手の話を聞くときには、我が事のように相手の考えを理解し、言葉に表れない感情や願いにも気づくことができます。
また、自分の解釈に留まらず、相手の真意を引き出す質問を交えることもできるのです。
自己変容段階の人は、相手の意見の内容だけでなく、背景や価値観に深く目を向けるので、話し手自身にも新たな発見が生まれます。
さらに、「他者との関わりによってのみ、自己は成長する」と考え、話し手の存在そのものを大切にするという特徴もあります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
発達段階によって、物事の見え方や考え方は変わること、相手の話の聞き方、他者との関わり方も変わることが分かりましたね。
それぞれの発達段階における特徴を理解したうえで、自分自身のこれまでの考え方や行為を振り返ってみてください。
なお、「成人発達理論から見る管理職のリーダーシップ」コースでは、他にも、成人発達理論の詳細や、自らの発達段階を上げる方法などについても学ぶことができますので、ぜひ視聴してみてくださいね。
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