目次
部下育成の心得
監督職の皆さんには、組織をマネジメントして、チームとして成果を上げていくよう働きかける役割があります。
そして、その中には、部下育成という役割も含まれています。
今回は、部下育成において心得ておくべきポイントの中から、ティーチングとコーチングの使い分けについてご紹介します。
ティーチングとコーチングの違い
まずは、ティーチングとコーチングの違いについて確認しましょう。
ティーチングとコーチングは、どちらも相手の理解を進めるための方法ですが、その目的やアプローチ方法は異なります。
2-1. ティーチングとは
ティーチングは、自分が相手に答えを「教える」姿勢のことを指します。
この時、答えを持っているのは自分です。
ティーチングは、知識・技術・職場のルールなど、明確な答えや決まりのあるものを、理解するときに有効です。
そもそも知識がなければ対処が難しい場面や、緊急性の高い場面においては、本人に考えさせる前に、ティーチングという手段を取ることが重要です。
2-2. コーチングとは
コーチングは、相手から答えを「引き出す」姿勢のことを指します。
患者さんとのコミュニケーション・業務改善など、明確な答えのないことについて、思考を深める時に有効です。
ただし、考えても答えにたどり着けないことや、知識がなければ答えようのないことを、コーチングで引き出そうとするのは避けてください。
ティーチングとコーチングのそれぞれのメリット・デメリット
ティーチングとコーチングにはそれぞれメリットとデメリットがあります。
ティーチングのメリット・デメリット
メリット
効率的に知識や技術を伝えることができることです。
デメリット
ティーチングを受ける側の「自分の頭で考える力」を育てることができません。
コーチングのメリット・デメリット
メリット
ティーチングを受ける側の「自分の」頭で考える力」を育てることができます。
デメリット
効率的に知識や技術を伝えることができません。
また、コーチングをする側にもスキルが求められます。
ティーチングとコーチングどう使い分ける?
ではここから、職員に合わせた育成方法の例をいくつかご紹介します。
3-1. 新入職員に対してはティーチング
例えば、中途入職者を含む新入職員や、若手職員など、経験の浅い相手にはティーチングを採用し、いわゆる「うちの文化」を教えます。
「うちの文化」とは、組織の経営理念や遠泳方針、部門方針、監督職自身の仕事のポリシーなどを含みます。
また、組織の一員としてとってほしい行動に名前をつけて、繰り返し説くとの重要です。
例えば、「当事者意識」や「5つの基準行動」など、組織で大切にしているものを共通言語化し、習慣づくまで根気強く伝えます。
3-2. 中堅職員に対してはコーチング
中堅層、ベテランの職員に対しては、コーチングを通じて、本人の「WILL感情」、つまり「これをやりたい」というものを引き出しましょう。
これは、業務経験に比例して、Must=すべきこと、Can=できることの基準がある程度満たされていることが前提になります。
その為に、面談など、落ち着いて話せる機会を確保した上で、「全体の方針や、自身の役割を考慮しなくて良いとしたら、あなたは何がしたいですか?」、「その背景にある、あなた自身が大切にしていることは何ですか?」といった質問を投げかけてみましょう。
これは、単に本人のやりたいことを実現させるのではなく、本人の仕事観を、職場に合う形で表現する方法を、一緒に考えるということです。
3-3. 年上や優秀は職員に対してはティーチングとコーチング
自分より年上の部下の場合は、互いにティーチング・コーチングをし合う関係性を目指しましょう。
上司である監督職と同等、あるいは優れたレベルの技術を持つ部下と仕事をする時は、いくつかのルールに従うのがベターです。
自身も多くの部下を持つ病院長であるフロマス氏による『「天才部下」を率いて、最強のチームをつくる10のルール』によれば、自分より優れた技術を持つ部下と働く際にはまず、鏡と向き合うこと、とあります。
鏡と向き合うとは、自分自身と向き合う、ということです。
つまり、自分が部下より技術・経験共に浅いこと、そして部下もそれを知っているということを認め、受け入れることから始まります。
技術で部下を上回ろうとするより、認めて受け入れることが、互いにティーチング・コーチングし合い、高め合うために、最も重要なポイントです。
また、この書籍では、問題で気を引く、というポイントも紹介されています。
気を引く、というと語弊がありますが、これは上司と部下という立場に凝り固まらずに、現場で起きている問題などを、率直に相談する、パートナーのような存在を意味しています。
際立って優秀や方は、得てして「やらされている」という感覚を望みませんし、そうしたことが、モチベーションや創意工夫に悪影響を及ぼす要因にもなり得ます。
逆に裁量を与えたり、対等な立場から頼りにしたりすることで、自ら能力を存分に発揮してくれるでしょう。
人によって、適した働きかけ方はあると思いますが、まずは、組織の中にある問題について、率直にフラットに意見を尋ねてみましょう。
3-4. 知識不足の職員にはティーチング
まだ知識や経験が十分ではなく、技術レベルを磨く段階にある部下への働きかけは、ティーチングを中心に行い、知識と経験の習得を促すとよいでしょう。
ティーチングにおいて重要なポイントは、監督職自身の思考プロセスや作業工程を、何を、なぜ、どのようにするのか、と、しっかり言語化することです。
またこの時必ずメモを取ってもらい、取り終わったメモを確認する、復唱してもらう、同じ内容を自分なりに説明してもらうなど、部下の理解度をチェックすると、さらに効果的です。
3-5. 思考不足の職員にはコーチング
業務経験は十分でも、考えることが苦手という部下には、コーチングによって考える訓練を行うのが有効です。
例えば、「担当患者さんが○○な状態になった時、あなたならどうする?」「その行動には、どんな効果とリスクがあると思う?」などと質問を投げかけ、徐々に思考の深ぼりをしていく工夫をしていくとよいでしょう。
ティーチングとコーチングの効果を高めるためには
上記の通り、指導を受ける側の入職年数や指導の目的によってティーチングとコーチングを使い分けることが、指導の効果を高めるポイントです。
ティーチングが適している場面でコーチングをしようとしたり、コーチングが適している場面でティーチングをしたりしてしまうのは、指導効果が低くだけでなく、指導を受ける側に反感を抱かせる可能性すらあります。
昨今は、「コーチング」という言葉が流行ってきていることもあり、安易にコーチングに飛びつく人も多くなってきています。
それに呼応するかのように「コーチングしたがりの上司・先輩」という皮肉な言葉も出てきていますので、ご注意ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ティーチングとコーチングの違いを理解し、部下との関係や理解度によって、上手く使い分けることで、部下育成をスムーズに進めていけるとよいですね。
なお、「監督職からはじめる部下育成」コースでは、他にも、部下の「気づき」を育てる、必ずチームで関わる、存在と役割を切り分ける、などのテーマについて学ぶことができますので、ぜひ視聴してみてくださいね。
▼サンプル動画はこちら▼